夢をみた

夢を見た。

 

夢のなかで彼女は、ごめんね。としきりに呟きながら僕を抱き締めた。

 

滑らかなタッチで僕の太ももを撫でる。女性らしいスベスベとした手先が僕の喉元をくすぐった。滑らかな肌の女の子はタッチも滑らかであることを初めて知ったところで、本物の彼女の手は少しシワの入ったゴツゴツとした手であることを思い出す。偶然、それも数回しか触ったことのない彼女の手で夢を自覚する。

 

彼女の滑らかな手は僕を挿入へ導く。骨ばった恥丘が、挿入を促す開脚により強調される。夢とは現実のアイコラージュであり、彼女の恥丘はアダルトビデオのモンタージュに過ぎない。粗末なアイコラの正体に気付いたとき、強姦罪実刑が懲役4年であることと、6年間の片想いの末に彼女の秘所に触れることができなかった事実とが往き来する。

 

射精をするわけでもしないわけでもなく、挿入は終わる。いつ終わったのかもわからないけど、また彼女の滑らかな手が僕を撫でていた。アダルトビデオのシークバーを右へ進めるように、夢のなかでは違和感なく、画面の外からは違和感だらけで。僕は射精をしたらしい。射精後のオーガズムには自慰行為の感覚が使用されていて、なんだかとても安心した。

 

夢の中で彼女は、しきりに「ごめんね。」と呟きながら、僕を挿入へと導く。

 

この、「ごめんね。」の声は、僕が彼女に告白をしたときに、二時間にも渡って彼女が泣きながら呟き続けた、あの声であったと思う。

 

 

あのとき、泣きながら僕の背中を抱き締めていた彼女の手は、やはりゴツゴツとしていた。それでいて、泣きながら僕の羽織るカーディガンをグシャグシャに掴む彼女の手は、わざとらしいほどに艶かしかった。

 

 

彼女の手は、僕の髪を撫で、首筋へ降り、また股間をまさぐる。

 

これをみよがしに、彼女は射精を促し、何度目か分からない絶頂を僕は体験する。いや、体験したのだろう。シークバーは、また、射精直後まで右へ進んでいた。

 

頭部に違和感がある。身体がローションまみれだ。ナンセンスとしか言いようがない。彼女は、園子温が大好きで、僕はその、ナンセンスを盲目的に褒めちぎる彼女が大嫌いな自分のことが大好きだったんだ。

 

僕の髪から首筋へ降りて、太もも、股間まで、僕の身体はローションにまみれていた。

 

 

目が覚めた。時計の針は8時を指しており、僕はベットから跳ね起きた。

 

慌ただしく、かつ、夢よりも中身のない日常に戻る。片想いを中心に人生が組み立った者にとって、日常とは、彼女との夢よりも中身のないものだ。

 

夢のなかで、彼女の手を洗い落としたら、その手は滑らかな女性の手なのか、それとも、少しシワの入ったゴツゴツとした手が現れるのだろうか。

 

 

片想いにとって大切なのは、そういった、夢の中の自己満足であると、僕は思う。

 

 

僕はもう、26歳になった。